子どもの全てをわかっていると過信しない
昨年度が終わりに差し掛かったころ、子どもの通う園で幼稚園スタッフと保護者の面談がありました。
保護者からは家庭での様子を、幼稚園スタッフからは園での様子を互いに共有し、この1年の子どもの育ちを共に振り返ったり、今後の育ちへの願いなどに想いを馳せる…。
園と家庭それぞれの環境で見えている世界を共有し合ってみると、双方の目から見た子どもの姿や特徴には大きなズレはないように感じた時間でした。
現在の通っている園に入園する以前は、双方の認識や捉え方の違いに胸がザワザワするような経験をしたこともあったので、どんな風に見えているのかなーと気になっていたのだけれど。
ただ、単純にズレがあるのが悪い/ズレがなければ良いという話をしたいわけではなく、今回はその場をどういう目的として考えているかが大事だなと思ったという話。
- 自分が見えている世界だけで「この子はこういう子である」と判断したり、決めつけようとしていないか。
- 仮に双方に認識のズレがあったとしたら、その時に、保護者も幼稚園スタッフもそれぞれが見えていない時間の子どもの姿を知ろう、理解しようとする姿勢があるか。
自分の見えていない部分も含めて、子どものことをより理解しようとしてくれるスタンスは、ひとりの保護者の正直な感覚としては、一緒に育ちを見守ってくれようとしている安心感があります。
前にズレを感じた時の心のざわつきは今思えば、認識の相違にあったのではなく、自分が見えている世界の情報だけで判断されるのではないかということへの恐れや違和感だったのかもしれません。
モンテッソーリ教育では子どもを観察することをとても大切にしています。なぜなら、子どものその時々の発達のニーズに応えていくためには、観察によって子どもを理解し、その上で環境を整えたり、環境とつなげる役割を大人が担うことが必要だから。
正しい理解なくしては、子どもの発達のニーズに全く応えられていないアプローチになってしまう可能性が高い。
まず正しい理解が必要であり、その正しい理解のために、客観的な「観察」が大切なことと位置付けられています。
ただこの「観察」が難しい…。
まず、観察者側に思い込みや先入観があったり、見聞きしたことに対して自分の解釈を入れて捉えてしまうというのは、よくあることです。
「このような行動を取るということは、こういうタイプの子だ」
「このような発言をするということは、こんなことを考えているに違いない」
というようなぐあいに。
行動や発言は事実でも、「〜というタイプだ」「〜と考えているはずだ」は観察している方の解釈。
もしこの解釈が違っていれば、この解釈を元に大人が考えた関わり方はその子どもには合わないし、結果的に本人のためにはならないかもしれません。
そして、自分が「観察」できるのは本当にごく一部の時間です。
その子には自分が観察していない時間があるし、その子の行動や発言を引き起こした原因は、自分が観察していなかった時間にあるかもしれない。
さらに、大人の私たちも家にいる時の自分と外にいる時の自分が違うように、子どもにも色んなパートがあり、自分が観察できているのはきっと、ほんの一部のパートだけ。自分が見えていない、自分には見せてくれていないパートもあると考えるのが自然だと思います。
一部の切り取られた情報だけでその子の全てを理解することはできないし、理解したつもりになって過信してしまうのは危ないことかもしれません…。
園と家庭で見えている世界を共有し合う機会は、自分が思い込みや先入観で見ていないか気付ける機会であり、自分が見えている時間や一部のパート以外のその子を知り、その子についての「正しい理解」に近づけていくことができる機会でもあります。
(私たちも含めてですが、特に親は子どもに自分たちの願いを投影してしまいがち=それが思い込みにつながりがちなので、注意が必要と思っています)
自分が見えている世界だけで「この子はこういう子である」と決めつけたり、評価・判断するのではなく、自分が見えていない時間の子どもの姿を理解しようとするスタンスで臨みたいと改めて思わせてもらえる機会になったのでした。
4月になり新年度を迎えました。
今年度も色んな出来事が起きるでしょうし、その出来事から感じること、周囲との関係性の中で影響を受けることもきっとあって、子ども自身にもいろんな変化が起きるのだと思います。
家庭でも子どもの様子を注意深く観察する、そして子どもの言葉に耳を傾けたり丁寧に対話をすることを心がけつつも、それで全てを理解できたと過信せず、自分たちが見えていない部分の話をできる限り多く受け取りたい。
そして、自分たちの理解に偏りがないか、自分たちのフィルターで見てしまっていないか我が身を振り返ったり、共有してもらった情報も統合しながら、子どもへの理解を深めた上で、その時々の発達に必要なサポートをしていければと思っています。
今年度も楽しく充実した1年になりますように。
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