子どもの言葉の育ちをサポートするには

モンテッソーリ, 日々の気づき, 育児

家族での移住に伴い、この春から子どもが新しい幼稚園に通い始めました。
あっという間に3ヶ月が経ってしまい、もう夏休み…というタイミングなのですが、最初の1学期を少しずつ振り返ってみたいと思います。

今回は学校の先生が保護者向けに企画してくださったセミナーについて。
小学校に入ると抽象的な言葉がどんどん使われ出し、中学年あたりで理解ができなくなる壁にぶつかるケースも多いとか。
「子どもの豊かな言語環境をつくる」と題し、子どもの言葉の発達をふまえると、大人はどのような関わりをするのが望ましいのかについてお話くださいました。
お聞きしていてモンテッソーリ教育の考え方とも通じるところが多くあったので、そんな観点で今日は書いてみたいと思います。


1.人間は言葉をどう獲得するのか?

【セミナーのサマリ】
・人は環境の中で言葉を学ぶ
・子どもが言葉を学ぶ環境とは、周囲にいる人の言葉そのもの
・言語能力は遺伝よりも環境(特に家庭環境)の影響が強い
・モノに対応する単語(ex.りんご)、抽象的概念(ex.愛)、挨拶やお礼などの言葉(ex.人に何かをしてもらった時の「ありがとう」)を学んでいく
・未知の言葉と出会った時には、周辺の文脈から意味を類推し、自分で実際に使いながら学ぶ

モンテッソーリ教育において環境は最もと言えるぐらい重要とされていて、大人の役割として大切なのはその環境を整えることだと言われています。そして環境には物理的だけではなく人的な意味も含まれているので、子どもの周囲にいる人の在り方や関わりもとても大切です。
一緒に生活している人のものを吸収して自分のものにしていくので、言語の習得は遺伝の要素はないとモンテッソーリも言っています。

「子どもは自分がともに生活している人々の習慣や風習を自分のものにします。したがって、これら言語や習慣、風習などの獲得には、遺伝の要素はありません。子どもは、自分を取り巻いている環境から吸収することによって、自分自身で将来の大人としての人間を形成するのです。」

マリア・モンテッソーリ『子どもの精神』


子どもの抽象的な思考がより育っていくのは主に就学後、それまでは現実的・具体的な物や環境を通じて様々なことを理解します。
モンテッソーリの言語教育はそのような子どもの発達のプロセスににそって、まず具体から入り、その後抽象的な世界に導く流れになっています。
語彙も目の前にある(実際に見たり手に取ったりできる)ものの名前からスタートし、それ以外へと拡充していきますし、品詞もまずはものの名前である名詞からスタートします。

私たち大人でも、例えば外国語を聞いていて知らない単語に出会った際、前後の知っている単語や文脈を手がかりに「こういうことかな?」と推測する経験はあると思います。逆に推測や理解できないと会話に入れなかったり、気後れしてしまうことも…。
親としては日々の会話や絵本を読み聞かせる時など、自然な会話ややり取りの中で語彙を拡充する機会を作ることが、子どもの言葉を学ぶ環境を整える一歩なのかなと感じました。


2.幼児にとっての豊かな言語環境とは?

【セミナーのサマリ】
・幼児期に触れる言語の量と質は家庭によって差があり、さらに幼児期の言語環境の差は、その後に影響する
・豊かな言語環境で育つと、多くの言葉に出会う→自分でも意味を類推して、使いながら言葉を増やす→増やした言葉を手がかりに、さらに類推して新しい言葉を獲得する
・教え込んでも子どもの側に欲求がなければ学ばない。認知能力の発達を待ち、五感を働かせつつ、言語環境を整えることが重要

さて、モンテッソーリ教育には、6歳までの子どもが持つ、環境の中のものをそのまま吸収し、自分のものにしてしまう特別な知性として「吸収精神」という言葉があります。
この力は環境にあるものはどんどん取り込んでいきますが、逆にいうと環境の中にないものは取り込めません。つまり、声かけや親子での会話、読み聞かせも含めて、豊かな言葉で溢れている環境であれば言葉をどんどん吸収していくが、それらが乏しい環境では取り込めるものが少ないので、結果として身に付く語彙力なども少なくなってしまうはずです。

先生から紹介のあった書籍の一冊に、私たちがモンテッソーリのトレーニングセンターに通っていた頃、同級生に薦めてもらって読んだ本がありました。サマリの1点目に関する調査結果は、上記のような環境の違いによるものなのだろうと想像します。
ちなみにその書籍の中では、子どもの豊かな言語環境のための大人の関わり方として、
・Tune in :注意と体を子どもに向ける
・Talk more:たくさん話す
・Take turns:子どもと交互に対話する
という3つのTが紹介されているので、興味のある方は参考にしてみてください。

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サマリの3点目はモンテッソーリ教育の「敏感期」の考え方と親和性がある内容ですが、長くなってしまうので今回は割愛。また別の機会に書きたいと思います。


3.読み聞かせの効果

【セミナーのサマリ】
・話し言葉は日常会話で自然に学べるが、語彙は少なく、文法が正しくないケースも
・書き言葉は自然に学ぶことはできず、意図的な学びの機会が必要。語彙レベルが高く、文法も整っている
・本(絵本)の読み聞かせは書き言葉の入口として◎。読み書きへの興味関心を高め、現時点だけではなく将来の読解能力にも影響する

読み聞かせは先生がおっしゃっていたように、日常会話の中では出会わない語彙や文章に出会える良い機会だと感じました。
加えて上記サマリの中では「読み書きへの興味関心を高める」という点が印象的に残っています。
「話す」「書く」「読む」どれも大切な力ですが、特に小さい頃の言語教育では言葉に楽しい印象と興味を持つことが大切な気がします。楽しさや面白さを実感し、興味関心を持てれば、その後の言語教育にもつながっていくはずだからです。

自分が思っていることを言葉を通じて表現するということ、その表現を通じて「私が言っていることに興味を持ってもらえている(=私が表現していることには価値がある)」と感じることは、子どもの自信、自己肯定感に繋がります。
就学前の今はその表現するための言葉の鍵を手に入れる、言葉の世界の入り口にいるということ。

どのようにしたら目の前の子どもが持っている良さを、その子ども自身が言葉の力を使って表現できるのか。周囲と共に思考したり、コミュニケーションしたり、共感や感動を分かち合ったりできるようになるのか。子どもが自分自身で言葉を獲得していき、これらの力を発揮できるようになるにはどう関わったら良いのか。
そんなことを周囲にいる私たち大人が考えながら、子どもに関わり、援助していきたいなと思います。


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